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直火焼き

ものを煮炊きするという方法に対して、もうひとつの大事な方法は「焼く」ことです。

人類が火の存在を知ったとき、彼らは「暖をとる」ことと、「焼く」ことの2つを発見したに違いないでしょう。

もっとも原始的な調理の方法は「焼く」ことから始まったのです。

「焼いて調理する」という熱源には、ガス・電気・炭火などが使用されますが、いずれも直接熱源を使用して焼く場合と、鉄板などを使って間接的に焼く場合とがあります。

味の点からいえば、直接熱源を利用する、いわゆる直火で焼く方法がすぐれている場合が多いですが、材料によっては、直火が利用できないものもあり、一外ーに直火の方が勝っていると言い切ることはできません。

直火焼き その2

昨今、つとに話題に昇る「遠赤外線」なる語は、少し前までは広辞苑にも載っていませんでした。

直火焼きの良さは、古来「輻射熱による」ものとされています。

輻射とは、「車の輻(や)のように一点から周囲に射出すること。放射」とか、「熱線電磁波などが物体から四方に放出される現象。放射」とあるので、熱源は、「固体から発する」場合の方が能率がいいことが理解できます。

しかし、直火焼きで困ることは、肉などを焼いたときに落ちる肉汁やタレの処理ですよね。

電気(ニクロム線)やガスでは、この処理に困るため、耐熱ガラスや穴あきの石綿などを使用していますが、これでは本当の直火焼きとはいえません。

そこで登場するのが木炭なのです。

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黒炭と白炭

木炭には黒炭と白炭とがあります。

黒炭は土がまの中で消火するため、黒色で質が柔らかいです。

くぬぎ、ならなどを用いています。

白炭は石がまの中で高温で焼きます。

表面が灰白色で質が堅く、火持ちがいいのが特徴。

かしなど堅い木を用いています。

その白炭の中で、最も品質の高いものが、近年特に話題に昇るようになった備長炭ですね。

備長窯と呼ばれる特殊な窯で、1週間以上かけて焼かれる最高級の白炭です。

ウバメガシを使った備長炭の最高のものは「馬目○○」と呼ばれ、東京のうなぎ屋、一流料亭で引っぱり凧です。

黒炭は、瞬発力が強く、火力も強いですが、直火焼きには向きません。

火力が強すぎて、中まで火が通らないうちに外側が焦げてしまいます。

それにたれや肉汁などが落ちると、その部分が真黒になってなかなか元へ戻らないのです。

当然、火力はがた落ちとなり、焼きむらの原因となります。

備長炭はスゴイ

その点・・・。

備長炭は、黒炭よりはやや低い温度ながら持続力に富んでいます。

話題の遠赤外線も豊富です。

たれや肉汁などが落ちても、チュチュチュチュと音を立て、少しは黒くなるけれどもしばらくするとまた元へ戻ります。

たれや肉汁が炭の上に落ちると香ばしい匂いを出しますよね。

その煙が燃製の働きをして、炭火焼き独特の匂いをつけます。

更に、風などで飛んだ灰は肉やたれに落ちていっそう風味を増すのです・・・。

・・・と書き進めれば、いいことずくめのようですが、どっこい、備長炭の使いこなしは大変なこと。

馬に例えれば、じゃじゃ馬でしょう。

乗り手が余程しっかりしていないと、振り落とされてしまうのです。

手間と、労力をいとわず、乗りこなしてみようではないか。

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炭火焼きの炉

わたしが炭火焼きをこなせるようになったのは、「暮らしの手帖」のおかげです。

戦後しばらくたった頃に創刊され、最初は年4回の季刊でした。

現在は年6回の発行です。

初期のものはカラーのページはすごく少ないですが、内容的にはとてもユニークなものが多く、今読み返してみても新鮮な感じがする記事が多いのです。

そんななかでわたしの心を強く捉えたのは、20号の「魚を上手に焼くコツ」という記事。

銀座「新太爐」の木村義晴氏は、「魚をきつね色にきれいに焼くには焔は禁物、土のコンロでは駄目」と、組立て式の煉瓦の炉と、串の打ち方、焼き方などを写真入りで披露されています。

この炉は、煉瓦が11枚あればいつでもどこでも(戸外でも)使えるという便利なもので、使わないときは積んでおけばよく、第一安上がりなのです。

ただし、地面へそのまま置くと低すぎるので、台所の古くなったキャスター付きのワゴンを土間に下にして、その上にセットし、いつでも使えるようにしました。

煉瓦の組み方

煉瓦の組み方は次の通りです。

まず、煉瓦6枚を長い方を横にして、縦に3枚ずつ並べて長方形の台をつくります。

その上に、煉瓦5枚をたてて囲うように置きます。

つまり「長方形の題の向こう側に2枚並べて置き、両側に1枚ずつ置く。最後の1枚は手前に、隙間を左右にあけて置く」のです。

空気は、この手前の隙間から入るだけ。

コンロなどのようにロストルがないので、良質の炭でないと立ち消えのおそれがあります。

渋団扇は必需品ですね。

木村氏は「魚」をおいしく焼くため、煉瓦の炉をはじめとしてそのノウハウを紹介して下さったのですが、わたしはこの炉を、魚を焼くだけに使うのは勿体ないと考えました。

それで焼鳥、焼肉、バーベキューに使ってみたら大成功だったのです。

今では、魚よりも肉類を焼くことや、なす、たまねぎ、とうもろこしなどを焼くことに、この炉を使うことの方が多くなってしまいました。

安い煉瓦が1番

もう1台は、バーベキュー専用として、表の庭の松の木の近くに置いてあります。

これは、もう少し人数が多くなっても、炉の有効面積を広げることができるように設計したもので平常は、さきの11枚分の形にしか見えません。

人数がふえた時はカバーを取って、煉瓦九枚分の台の広さとし、たてる煉瓦を2枚ふやすと、有効面積が、約1.5倍になるというものです。

その他、並べた煉瓦は、丸い鉄の棒の上に置いてあり、煉瓦をはずさなくても灰を処理できます。

またその下には扉をつけ、網やマッチなどの小道具を収納できるようにしました。

最高級のステンレスを使ったこの炉は、名実共に立派なものですが、重いのが欠点で、他の場所への移動が困難です。

炉の中心部である煉瓦の部分に耐火煉瓦を使ってみたのですが、熱の反射がきつすぎて、ほっこりとした焼き上がりになりにくかったですね。

1番安い、普通の煉瓦がよい結果を生むとことがわかりびっくりしました。

熱のため、煉瓦が割れてきたりしますが、時々全部取り替えても費用はしれています。

簡単に作れる調理台兼用の台

安上がりでおいしく焼けるときけば、そんな炉を作ってみたいと思うのが人情ですよね。

キャスター付きでもなく、何となく野暮ったいですが、いらない時にはその辺に積んでおけるという、調理台兼用の台を考えてみました。

まず、ブロック(39×19×10)を24枚用意します。

まず9枚を、普通に積むように3列、3段に積みます。

次に、12センチほど間隔をあけて同じように9枚を平行に積みます。

残りの6枚をこの上に平らに並べれば完成。

これで、開口114、奥行き44、高さ67の台が出来上がります。

この中心に、前述の煉瓦の炉を置けば、左右に幅35センチのスペースが出来ます。

ブロック24枚、煉瓦11枚、それにビーチパラソルと椅子があれば、あなたの家の庭はバーベキュー会場に早替わりです。

あとは、裸電球でもつるして夏の夜を満喫すればいいのです。

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昔の道具ではない

いつかテレビで炭おこしの競争をさせた番組がありました。

若い娘や中年の女性は四苦八苦、果ては煙にむせるだけで一向に火はおこりません。

ところが、年輩の女性は慣れた手付きで、またたく間に炭は真赤になったのです。

スイッチひとつ、コックひとつで点火わけなし、火力調節も思いのまま、こんな便利な時代だから当然といえば当然の結果でしたが、それにしても年輩の女性は見事でしたね。

若い人たちは完敗という一幕でした。

でも、考えてみれば年輩の女性がえらいわけでも、若、中年の女性が駄目なわけでもないでしょう。

年輩の女性にとっては、炭おこしは日常茶飯事であっただけのこと。

むしろ、炭をおこす道具や、その手順、作業などを「古い」ということだけで見向きもさせなくしてしまい、「昔の道具」として資料室に展示するような「現代」という怪物にこそ、問題があるのです。

良い物、すばらしいものは、時代を越えていることを、今こそ心にきざむべきですよね。

炭をおこす

炭をおこすには道具と手順とが必要です。

まず、何はおいても煽炉(土や金属で作り、煮炊きに用いる持ち運びのできる炉)・かんてき(京阪方言)・七輪、七厘(物を煮るのに七厘の炭で足りる意から生まれたことば、規炉の一)がいります。

次に、マッチ(ライター)、新聞紙(大)を2枚、かまぼこの板を3~4枚、あれば消し炭、なければかまぼこの板をもう2~3枚、うちわ、手よき、備長炭とやわらかいを炭を少々。

七輪の下の口をあけ、朝顔(広くなっている部分)の所に鉄製の輪を置きます。

これは炭をたくさん必要とする時に用います。

新聞紙1枚を二つ折りにし、横にして端からねじって棒状にします。

それを輪にして、七輪の「す」(下の通風口からの空気を送.たり灰を落したりするように隙間があいている)の上にはめこみます。

もう1枚の新聞紙を二つに破って、あらく丸めて七輪の中へ入れます。

マッチで火をつけその上にかまぼこの板を小さく割ったものを並べます。

あれば消し炭、なければできるだけやわらかい炭を置きます。

うちわなどで風を送り、消し炭などに火がついてきたら、用意した炭、はじめは小さいもの、次に10センチ位に切った炭を必要なだけ置きます。

備長炭なら、備長炭に火がつくまで風を送り続けます。

送風機を使ってもいいですが、高熱のため七輪などのいたみは早いことを忘れてはなりません。

炭の全体が真赤になってから炉に移します。

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