アメリカの大恐慌
1929年9月3日。
この日はウォールストリートにおいて、1920年代最後にかけて盛り上がった歴史的株式ブームのクライマックスとなりました。
株価は過去最高値を記録。
この年のニューヨークの残暑は、とりわけきびしいものでした。
寒暖計は34度を越えています。
建ちかかっていた高層ビルの間から、太陽は容赦なく照りつづけています。
ニューヨークは摩天楼の時代に入ろうとしていました。
事実、すでにクライスラー・ビルなどいくつかの摩天楼が、大空を目がけて伸びつつありました。
34番街では、旧ウォルドーフ・アストリア・ホテルが取り壊されていました。
ここに摩天楼の摩天楼、エンパイア・ステート・ビルが建つことになっていました。
人びとは株式相場の罫線を大空に描いて、より高く、より高くと心に念じているかのようでした。
そこには摩天楼が、飛行船が、飛行機が彼らの限りない夢をふくらませていたのです。:
今日もいま、ドイツの世界最大の飛行船、「ツェッペリン伯」号は成功裡に世界1周を終えて、大西洋上にあり、帰国を急いでいました。
エンパイア・ステート・ビルの設計者は、飛行船時代の到来を予想して、塔の先端に繋留装置を取りつけることを考えていました。
他方では、1927年にリンドバーグが大西洋を横断して以来、輸送手段としての飛行機の実用化も進められていたが、これは難航していたのです。
この日もトランスコンチネンタル航空輸送会社(TAT)の飛行機がニューメキシコで雷雨に遭って墜落、8人の犠牲者を出したという痛ましいニュースが入ってきたばかり。
この時代、まだまだ飛行機は安全でありませんでした。
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