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2010年07月 アーカイブ

アメリカの大恐慌

1929年9月3日。


この日はウォールストリートにおいて、1920年代最後にかけて盛り上がった歴史的株式ブームのクライマックスとなりました。

株価は過去最高値を記録。

この年のニューヨークの残暑は、とりわけきびしいものでした。

寒暖計は34度を越えています。

建ちかかっていた高層ビルの間から、太陽は容赦なく照りつづけています。

ニューヨークは摩天楼の時代に入ろうとしていました。

事実、すでにクライスラー・ビルなどいくつかの摩天楼が、大空を目がけて伸びつつありました。

34番街では、旧ウォルドーフ・アストリア・ホテルが取り壊されていました。

ここに摩天楼の摩天楼、エンパイア・ステート・ビルが建つことになっていました。

人びとは株式相場の罫線を大空に描いて、より高く、より高くと心に念じているかのようでした。

そこには摩天楼が、飛行船が、飛行機が彼らの限りない夢をふくらませていたのです。:


今日もいま、ドイツの世界最大の飛行船、「ツェッペリン伯」号は成功裡に世界1周を終えて、大西洋上にあり、帰国を急いでいました。

エンパイア・ステート・ビルの設計者は、飛行船時代の到来を予想して、塔の先端に繋留装置を取りつけることを考えていました。

他方では、1927年にリンドバーグが大西洋を横断して以来、輸送手段としての飛行機の実用化も進められていたが、これは難航していたのです。

この日もトランスコンチネンタル航空輸送会社(TAT)の飛行機がニューメキシコで雷雨に遭って墜落、8人の犠牲者を出したという痛ましいニュースが入ってきたばかり。

この時代、まだまだ飛行機は安全でありませんでした。

アメリカの大恐慌 2

1929年9月3日。


下界では何が起こっていたのでしょうか。

ニューヨークのタイムズ・スクウェアあたり、ラジオからは流行の「雨に歌えば」の軽快で甘いメロディーが流れていました。

ラジオはまだ小型が現れず、135ドルという高い値段でしたが、すでに1200万の家庭に備えられていました。

この界隈の映画館の看板には、サイレント時代からトーキー時代に入って、新しいスターたちの顔が登場しつつありました。


・・・このように1920年代末期には、ラジオやトーキー映画が大衆文化の新局面を押し広げつつあった一方では、スポーツの世界でも大衆化が進みつつありました。

なかでもプロ野球の世界では、何といってもべーブ・ルースが人気を集めていました。

この日こそ彼はホームランを打ちませんでしたが、今日までに40本を打っており、ジミー・フォックスの31本、ルー・ゲーリックの29本を断然引き離して、ホームラン王の面目を発揮していました。


・・・この残暑きびしい日、ニューヨークでどこが暑いといって、ウォールストリートの熱気ほどではなかったにちがいないでしょう。

株屋の店をのぞいてみれば、朝から株価の動きを見る人で、すでに熱気をはらんでいます。

もちろん、誰もこの日がアメリカの歴史の分岐点を示す運命の日になろうなどと考えるものはいませんでした。

それどころかGE株は今日395ドルの高値を更新したばかりで、いずれ近いうちに1000ドルになると株屋から耳打ちされていたのです。

GEのみならず、RCA、GM、USスティール、AT&Tなどの花形株は、いずれも先行き期待感で値を競り上げていました。

この日の株式の出来高も、450万株近くまでいくものとみられていたのです。

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